チキサニカムイ

ちきさにかむい

チキサニカムイ

チキサニカムイの別名

  • なし

チキサニカムイの御神徳

チキサニカムイの伝承地

  • 北海道各地

チキサニカムイの継続

  • アイヌラックル(子)
  • カンナカムイ(夫)

チキサニカムイの鎮座

  • ハルニレの木(あかだもの木)

チキサニカムイの解説

ちきさにかむい

チキサニカムイ チキサニカムイ

アイヌの祖先・アイヌラックルを生んだ、ハルニレの美しい女神・チキサニカムイ

【解説】

アイヌの祖先を生んだ美しい女神

チキサニカムイはハルニレ(あかだも)の木の女神で、アイヌの祖先・アイヌラックルの母親である。
伝承の内容は地域によって異なるが、チキサニカムイのあまりの美しさに多くの神々が見とれてしまうことは共通している。
チキサニカムイが登場する神話を、いくつか紹介しよう。

ある時、天界の門に神々が集まって、下界にある人間の国を眺めていた。
すると2つ並んで建っている家の中に、とても美しい2人の少女が見えた。

神々は「なんときれいな少女たちだ」と口々に言う。
中でも雷神のカンナカムイは熱心で、一番前で身を乗り出しながらうっとり見とれていた。

それを見た他の神々は、カンナカムイをからかってやろうと後ろからつついた。
不意をつかれたカンナカムイは体勢を崩し、そのまま天から落ちてしまう。

落下した先は、先ほど見とれていた少女たちの家。
雷神のカンナカムイが落ちた2つの家は、たちまち焼け落ちる。

焼け跡には『あかだも(チキサニ)』の木と『おひょうだも(アトニ)』の木が焼け焦げて立っていた。
2人の少女は、チキサニ媛とアトニ媛だったのだ。
2人はこの日、身ごもり、それぞれ男の子を生む。

チキサニの生んだ子はアイヌラックル。
アトニの生んだ子はポイヤウンペ。

この2人は腹違いの兄弟だ。
アイヌラックルの顔が赤いのは赤い木のチキサニから生まれたからで、ポイヤウンペの顔が白いのは白い木のアトニから生まれたからだという。

国造りの神が地上に降り立った時、ハルニレとイチイとヨモギを連れていた。
その中でも際立って美しいのはハルニレの女神・チキサニで、天上の神々はチキサニ目当てに毎日地上を見下ろしていた。

そんなある日。雷神のカンナカムイが押されたはずみで地上に落ちてしまう。
雷神が覆いかぶさったハルニレは身ごもり、やがて男の子を生んだ。

しかし地上は風が強く、子育てには向いていなかった。
そこでチキサニは、自分の皮を剥いで作った着物を子どもに着せ、抜くと火の燃える刀を与えて、天上の神々に預けた。

その男の子は成人すると、アイヌラックルとなって下界に降り、人々を導いたという。

国造りの神が海をかき混ぜてアイヌの国を造った時、棒を土に刺したまま天に帰ってしまった。
その棒はハルニレの木となり、国の中心にそびえ立つ木に育った。

その木から生まれたのがチキサニである。
ある日、下界を覗いていたいた雷神が、そのまま地上のハルニレの木に落ちてしまう。

それによってチキサニは身ごもり、男の子を生み落した。
アイヌラックルと名付けられ、国造りの神に育てられたその子は、成長して下界に戻り、アイヌの人々の祖先になったという。

以上の物語は、ハルニレの女神・チキサニカムイが、雷神・カンナカムイと結ばれて、アイヌラックルを生むという内容だ。
しかし、違う神と結ばれる物語も存在する。

火の神が初めて地上に降り立った時、右手にイチイ(ラルマニ)、左手にハルニレ(チキサニ)を連れていた。
その光景を見た日の神は、チキサニの美しさに見とれて振り返り、いつまでもじっと見つめていた。

火の神の計らいでチキサニと日の神は結ばれ、アイヌラックルが生まれた。

昔、アイヌの国造りの神は、天にそびえ立つハルニレの木で鋤(すき)を作った。
神はそれを持って下界に降り立ち、山と川、森と湖、動物を作った。

仕事を終えた神は天界へと帰ったが、ハルニレの木で作った鋤を忘れてしまった。
しばらくすると鋤は地上に根を下ろし、1本の立派な木となった。
その木から生まれたのがチキサニである。

ある時、そのハルニレの木の近くを通りかかった疱瘡の神がチキサニを見初め、妻とした。
ほどなく男の子が生まれ、その子はアイヌ民族の祖先・アイヌラックルになったという。

相手は違えど、チキサニカムイがアイヌラックルの母親であることは揺るぎない事実である。

最高に尊い神

アイヌでは、生活に役立つ植物は全て神だと考えられている。
人間の文明の発展に欠かせない火や、着物を作るための繊維を与えてくれたチキサニカムイは、最高に尊い神として敬われた。

天地創造の頃。
コタンカムイ(創造神)はドロノキを揉んで火を熾そうとしていた。
しかしドロノキは白や黒の木屑となって飛び散るばかりで、それらは魔人や淫乱の神、疱瘡の神になってしまった。

これではいけないと、今度はハルニレで作った発火装置を擦りあわせると、アペフチという火の神が生まれた。
そのためハルニレは、最高に尊い神として敬われるようになった。

チキサニカムイが自分の着物である樹皮を脱ぎ、我が子のために着物を作った物語は前出だが、アイヌの人々はハルニレの樹皮から繊維を紡ぎ、着物を作っていた。
樹皮を剥がす際には、「着物を作るために木の神様の衣をいただきます」と祈るのだという。

ハルニレは褐色の模様を織り込むのに使用された。

人間を作った神々が、「傷がすぐに治るから」と材料にハルニレを選んだという説もある。
ハルニレが、アイヌの人々の生活に深く根差していた様子がうかがえる。

文章担当弥紬

参考資料

  • ユーカラ

挿絵担当ササニシキ(元メンバー)

参考資料

  • ユーカラ

挿絵解説

木の女神ということで、木の上にそっと腰かけている様子を描きました。
また、雷神を見とれさせたというエピソードから、背景にはさりげなく雷雲を入れています。

チキサニカムイに関連する神様

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