葛の葉
くずのは
葛の葉の解説
くずのは


『安倍晴明』の母親と云われている伝説の白狐『葛の葉』を
紹介いたします。
【概要】
『安倍晴明』は『狐の子』と呼ばれています。
『葛の葉』という白狐が人間の女性に化け、
『安倍保名(あべのやすな)』という男性と恋に落ち、
その時にもうけた子どもが『安倍晴明』と言われています。
『葛の葉』と『安倍保名(あべのやすな)』の物語をもう少し詳しく見ていきましょう。
【白狐と1人の男の儚い恋物語】
話は、『安倍晴明』が生まれる前まで遡ります。
『安倍保名(あべのやすな)』が、信田の森の中で狩人に命を狙われている
一匹の白狐に出会いました。彼は、白狐を狩人の魔の手から匿いました。
命を救われた白狐は、保名に礼をいい、森の中へと消えていきました。
それから、数日経ったある日のことです。
信田の森に美しい女性が訪ねてきました。
彼女は『葛の葉』と名乗り、保名と一緒に暮らすようになりました。
2人は契りを交わし、やがて、2人の間に子どもが産まれました。
子は『安倍童子(のちの安倍晴明)』と名づけられ、すくすくと育っていきました。
しかし、その幸せは長くは続きませんでした。
『安倍童子』が4~5歳になる頃に、事件は起こります。
保名のもとに彼の師匠である、藤原保憲と、その娘。葛子(かつらこ)が、
彼のもとへと訪ねてきたのです。
その葛子の姿は『葛の葉』と瓜二つ。
幸いなことに2人が衝突することはありませんでしたが、
その夜、『葛の葉』は事情を察し、我が子を残して、保名のもとから離れて行きました。
【別説】
こちらの別説では、彼の師匠である藤原保憲と、その娘。葛子(かつらこ)は出てきません。
『人間の女性』に化けた『葛の葉』が、保名との間に子ども『安倍童子』をもうけます。
『葛の葉』の変身が解けるきっかけが、先ほどとは異なるためご紹介いたします。
『安倍童子』が4~5歳になる頃に、『葛の葉』は、家の庭先に出向いていました。
庭先には、菊の花が綺麗に咲き乱れていました。その姿があまりに美しく、
彼女は導かれるように、菊の花のもとへと近づいていきました。
しかし、庭先の菊の花の香りに心を奪われ、はっと我に返ったときには時既に遅し。
『葛の葉』は、元の白狐へと戻ってしまいます。
その姿は、幼き『安倍童子』の眼にも映りました。
「もう保名と『安倍童子』のもとにはいられない」と察した彼女は、
白狐の姿のまま、泣く泣く森へと消えていきました。
どちらの説でも、
『葛の葉』が、保名のもとから離れるときに
―「恋しくば尋ね来て見よ 和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」
という句を残しています。