胸鉏比売

むなすきひめ

胸鉏比売

胸鉏比売の別名

  • 田心比売

胸鉏比売の御神徳

胸鉏比売の伝承地

  • 島根県江津市

胸鉏比売の継続

  • 須佐之男命(父)

胸鉏比売の鎮座

  • 薗妙見早脚神社()

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胸鉏比売の解説

むなすきひめ

胸鉏比売 胸鉏比売

箱舟に乗せられて流された童女。
麗しく品のある姿に隠された荒々しさ。
鍛錬を繰り返し、弓矢の名手となった娘の正体とはー。

箱舟に乗った童女

遥か昔。まだ、この世を神様が治めていた頃のこと。
今の島根県江津市の浜に、一艘の箱舟が流れ着いた。

通りかかった地元の老夫婦が中を覗くと、7歳前後の可愛らしい童女が入っていた。
中には童女の他に、柏の葉が2つ3つ散っているだけ。
童女は立派な着物に身を包み、顔立ちも整っていて品がある。

老夫婦は、きっと神の子に違いないと、家に連れて帰り育てることにした。
子どもがいなかった老夫婦は、この不思議な童女を我が子のように慈しんで育てた。
童女が父母を恋しがって帰りたがらぬよう、出自について問うことはしなかった。

弓矢の名手

何年かして。
美しい娘となった姫に、翁が問う。
「おまえはどこから来たのかね」
姫は黙ったまま、東の方を指差した。
何回聞いても反応は同じ。

ただ、夜に起き出しては、出雲の方角を眺めている。
姫は家の中でも不可解な行動をとっていた。

いつも上の間に居て、上座に座るのだ。
かと思えば、毎日のように弓矢の稽古をしたり、山を駆け登ったり。
ひたすら体を鍛えている。

特に弓矢をとらせたら、娘に適う者はいなかった。
美しい容貌とは不釣り合いに、弓矢の腕はこの世のものとは思えないくらい抜きん出ていた。

出生の秘密

姫が13歳になった12月の、ある夜のこと。
出雲の岬の方角に、狼煙(のろし)が上がった。
その火は天を焦がすほどに大きくなる。

それを見た姫は、老夫婦に言った。
「あの狼煙は、出雲で戦が始まるという知らせです。私は出雲から流されて、ここに来ました。今、出雲に敵が押し寄せてきたに違いありません。私は出雲に戻り、敵を退けねばなりません」

それを聞いた老夫婦は驚いた。
「そなたは出雲の国の人であったか。いったいどうして、ここへ流された。なんで、そなたが敵を退けねばならない」
姫は泣きながら答える。

「私は、出雲の国の須佐之男命の子です。名を田心比売と申します。私は幼い頃、心が荒々しかったために父母の怒りにふれ、箱舟に乗せられて流されました。その後、十羅(じゅうら)という国が出雲の国を何回も攻めました。父たちはどうにか防いできましたが、十羅は強く負けそうです。そんな父の夢枕に立った神様が、『田心比売が帰ってくれば、出雲は必ず勝つだろう』とお告げになったそうです。父はそれを信じて、私にすぐ戻るようにと言っています。ですから、私は出雲に帰らなくてはなりません。長い間、育てていただきありがとうございました」
そうは言われても、老夫婦にとって姫は実の子同然。

簡単に納得は出来ない。
「そうだったのか。それでも、そなたと別れるのはつらいことだ。こんなに大きくなったのに……。なんとか、ここに留まることはできないのか」
老夫婦は姫の手を握って泣き崩れる。

しかし、姫の気持ちは変わらなかった。
「私が帰らなければ、出雲は滅ぼされてしまうでしょう。どうか、私を出雲へ帰らせてください。出雲に帰っても、おじいさんおばあさんに受けたご恩は忘れません」
そう言うと、姫は出雲の方へ向かって駆け出した。

「待て。待ってくれ」
老夫婦は泣きながら、懸命に浜辺の道を走り、姫を追いかける。
2人が追って来ることに気付いた姫は、シイの木の森の中にある石のかげに隠れた。

老夫婦は浅利の浦まで走ってきたが、そこでついに力尽き、亡くなってしまった。
出雲の国に帰った姫は、鍛え上げた体と弓矢で十羅の者を瞬く間に滅ぼし、出雲の国を救った。

大手柄を立てた姫は、父から『十羅刹女(じゅうらせつじょ)』という名を贈られ、長い間、出雲の国を平和に治めたという。
薗妙見早脚神社に祀られているのが田心比売こと胸鉏比売だと、【那賀郡誌】にはある。

足跡

江津市波子の港にある『神(かん)さん島』は、姫が箱舟に乗って流れ着いた場所だと言われている。
また、『弓が原』や『和田の矢場』という地名は、姫が弓矢の稽古をしたところからきている。
出雲の国へ帰る時に隠れていたシイの木の森辺りを『嘉久志(かくし)』といい、石を『かくれ岩』と呼んでいる。

文章担当己未(きみ)

参考資料

  • 『島根の伝説』『那賀郡誌』

挿絵担当夏瀬

参考資料

  • 『島根の伝説』『那賀郡誌』

挿絵解説

弓矢の名手から凛々しさなどを表現してみました。

胸鉏比売に関連する神様

むなすきひめ

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